冷えからくるイライラに──生理痛・頭痛・疲れをやわらげる温めかた

冬の光と大木

子どものころ、冬の夜に布団へもぐると、足もとに湯たんぽが入っていたことはありませんか。タオルにくるまれた丸いぬくもりに足の裏をのせると、からだの芯までほどけて、いつのまにか眠っていました。

大人になったいま、夕方の台所に立っていると、足先だけがいつまでも冷たいままのことがあります。家族のなにげないひと言に、つい強い声で返してしまう。あとになって、どうしてあんな言いかたをしたのだろうと、自分に落ちこむ。

冷えとイライラは、別々のことのように見えて、近いところにあります。からだが冷えて縮こまっていると、心のほうもゆとりをなくしてしまう。ここでは、食卓・お風呂・腹巻きといった、暮らしの中でできる温めかたを集めました。全部でなく、気になるものをひとつ選ぶのでかまいません。

1 冷えは、暮らしの積み重ね

「冷えは万病のもと」という言葉を、聞いたことがあるかもしれません。

冷えは、ある日とつぜん現れるものではありません。毎日の食事や、からだの動かしかた、眠りかたの積み重ねで、少しずつできていきます。

言い換えれば、暮らしの中に、ほどく手がかりもあるということです。

薬が必要な不調もありますが、毎日の暮らしかたで変えられる部分も、思っているより大きいものです。

どうぞ日々の生活スタイルに気持ちを向けてみてください。

1-1 毎日の食卓を見なおす14da3ec5f5242656a3d402cbfc7d858c_s

きっとほとんどの女性が、白くてフワフワしたものが好きでしょう。例えば、パン・ケーキ・バターと卵と砂糖がたっぷり入っているお菓子・・・

または、ケーキは太るから間食は果物にしているという方もいらっしゃいます。そして、ご飯を減らしてサラダをたっぷり食べることに切り替えている・・とか。

たまには良いのです。

世の中に溢れているこれらを完全にシャットアウトするのは、却ってストレスになり、食べる楽しみがなくなってしまうことになります。

ですから、上手なつきあいかたを知っておくと安心です。

人間のからだを作るのに、食べ物は必要です。しかし、日常的に摂っている食べ物自体が「冷えを招く原因」となっていることもあります。

まずは、冷えにくい食事を知るところから始めてみます。

1-1-1 温める食べもの、冷やす食べもの

東洋の食養生では昔から、食べものを、からだを温める「陽性」と、冷やす「陰性」に分けて考えてきました。科学で証明された分けかたではありませんが、季節の食卓を考える目安として、先人の知恵を借りてみます。

① 色  黒・赤・だいだいなどの暖色系の食品は、「陽性」になります。逆に、青・緑・白などの寒色系の食品は陰性になります。

例をあげれば、肉や魚は赤いので、陽性。ゴマでいうならば、黒ごまは陽性が強くなります。

色白さんのように見えて、土の中に埋まって黒く出てくる根菜類は陽性です。色白のきゅうりやレタス、もやしは陰性になります。

そして、牛乳・豆腐・パン・白砂糖といった白いものは陰性になります。

② しまっているか、しまっていないか

水分が少なく、「しまっているもの」は陽性になります。例えば蕎麦がこれになります。

そして、柔らかくて水分をたっぷり含んでいるうどんは、陰性ということになります。乳製品でいうと、水分の多い牛乳が陰性なのに対して、水分を取り除いたチーズは陽性となります。

③ 産地はどこか?

熱帯地方の方たちは、からだから熱を放出することでからだの維持ができています。

ということは、からだを冷やす食べ物が必要なのです。ですから、冷えのある方は、熱帯地方の食材を摂取すると陰性に偏りがちになります。

例を挙げると、バナナ・マンゴー・パイナップル・トマト・きゅうり、それにコーヒーなどです。

④ 塩がきいているか?

からだを温める作用の代表に「塩」があります。日本で古くから重宝されてきた、味噌・醤油・梅干し・漬物・干物です。塩気の多い食品は、陽性になります。

寒い地方では、漬物や塩蔵品など、塩気の強い保存食が冬の暮らしを支えてきました。ただ、塩分のとりすぎは血圧にかかわります。量よりも、味噌汁一杯の温かさを借りるくらいがちょうどよいでしょう。

1-1-2 冷やす食べものを、温かくいただく

からだを冷やすといわれる食べものも、食べかたしだいで温かくいただけます。

下記のような方法があります。

・熱を加えるということ(炒める・煮る)

・塩を加える(漬物にする・塩を振って食べる)

コーヒーなら、からだを温めるとされるシナモンをひとふりするのも、昔からの工夫です。

1-2 入れる前に、出す

からだが温まるには、めぐりのよさが欠かせません。

ところが忙しい毎日では、汗をかくことも、ゆっくり息を吐くことも、つい後回しになりがちです。

健康の情報は「何をとるか」に目が向きがちですが、入れる前に、出すことにも目を向けてみます。

からだの外へ出す働きには、便や尿、汗、そして呼吸があります。

下記にそれぞれの機能を改善するポイントをまとめてみました。

1-2-1 排泄を促す方法

① 入浴 湯船につかって、お腹や腰をしっかり温めます。

上がる前に、ひざから下に少し冷たい水をかけてみる方法もあります。

キュッとしまった肌が、あとからじんわり温まってくるのを感じられます。心臓や血圧が気になる方は、ぬるめの水で。

② 「出す」食材

・緑黄色野菜(食物繊維が多く、おなかの調子を整える)

・もやし(食物繊維が多く排便を促す)

・きのこ類(食物繊維が多く排便を促す)

・黒豆(昔から、からだを温める食べものとされてきた)

・発酵食品(おなかの調子を整える)

③ 息を、ゆっくり吐く

からだの外へ出ていくのは、尿と便、汗だけではありません。

吐く息からも、二酸化炭素や水分が出ています。朝、窓を開けて深く息を吐くと、からだが目を覚ましていくのがわかります。

1-2-2 吐き出すための心地よい呼吸法

ここで朝の5分くらいの呼吸法をお勧めします。

まず、口から、からだの中の空気が全部出ていくようなつもりで、細く長く吐き出してみます。

次に、鼻からゆっくり吸い込みます。お腹がふくらんでいくのを感じながら、四つ数えます。

これを5回ほどくり返してみます。

ゆっくり長く吐く呼吸は、からだを休ませる側の神経(副交感神経)が働きやすくなるといわれます。吐き終わるころには、肩が少し下がっているのに気づくかもしれません。

声を出して笑うことも、自然と深い呼吸になります。

1-3 冷たい飲みものの飲みすぎ

いつもバッグの中にペットボトルが入っていたり、ということはありませんか?

溢れる情報の中に「血液をサラサラにするため、たくさんのお水を取りましょう」ということがあります。しかし、野菜・果物などが大好きな女性は、意外と男性よりも多くの水分を摂取しています。

水分は生きていくのに欠かせないものですが、冷たい飲みものを一度にたくさん飲むと、お腹から冷えることがあります。

鉢植えの木も、水をやりすぎると根が弱ります。漢方では、からだに水がたまって巡らない状態を「水毒(すいどく)」と呼んできました。

のどがかわいたら、常温か温かいものを、少しずつ。夏や汗をかいた日は、しっかり水分をとってください。

1-4 お腹に手を当ててみる

お腹に手を当ててみてください。冷たくはないですか?

生理痛や足のむくみに悩む方の中には、おへそから下が冷たいと感じている方が少なくありません。

お腹が冷たいと感じたら、からだからの小さな便りと受けとってみてください。

食事に気を配るとともに、貼るカイロや湯たんぽも頼ってみてください。冷房の効いた夏場も、薄手の腹巻を一枚足すだけで、ずいぶん違います。

2 気になる不調ごとの温めかた

気になる不調ごとに、暮らしの中でできる温めかたをまとめました。

つらい症状が続くとき、急に強くなったときは、婦人科や内科で相談してください。

2-1 月経痛(生理痛)・PMS(月経前症候群)c9afe570e5ff6df7ee57a9019688f997_m

生理痛やPMSの原因はひとつではありませんが、お腹や腰を温めると痛みがやわらぐと感じる方は多いものです。

動けないほど痛い、量が急に増えた、という時は、冷えのせいと決めつけず、婦人科で相談してみてください。

2-1-1 月経痛への対策

① 腹巻はとても頼りになります。今は、おしゃれでかさばらない腹巻もたくさんあります。

ものによっては、カイロが入るポケットの付いたものもあります。季節によっては、レッグウォーマーもあたたかです。

② 前述した食生活の見直しとともに、保温効果の高いしょうが湯を取り入れてみてください。

2-1-2 しょうが湯の作り方

親指ぐらいの根生姜をすりおろし、湯飲みに入れます。熱湯を注ぎ、黒糖を少し入れて軽く甘味をつけます。

両手で湯飲みを包むと、手のひらからも温まってきます。

2-2 頭痛・頭重

頭痛や頭の重さには、肩こりや目の疲れ、気圧の変化など、いろいろな理由があります。

漢方では、その一部を先ほどの「水毒」としてとらえ、からだを温めて巡らせることを大切にしてきました。

2-2-1 頭痛・頭重への対策

からだの末端を温めることで、ぐっと体液の循環が良くなります。

次の手浴を試してみてください。

1、42℃くらいの少し熱いかなと思うくらいのお湯と冷水を張った洗面器を用意します。

2、初めにお湯に手首から先を3分間つけます。次に冷水を張った洗面器に10秒つけます。

これを交互に3~5回ほどくり返します。からだも心も温かくなっていくのを感じられます。お湯の熱さは、心地よいと感じる温度で。

2-3 冷え性sensitivity-to-cold-cause

「冷え性です」という女性は少なくありません。冬は、眠れないほどに手足が冷たく、毎年しもやけができる方さえいます。

「冷えは万病のもと」と、昔の人は言いました。

今は目立った不調がなくても、放っておかず、大事にしてあげてください。

2-3-1冷え性の対策

① 食事では、からだを温めるものを選んでみます。

たとえば、先ほどのしょうが湯や、温かい味噌汁です。

朝の一杯の味噌汁は、からだの内側からじんわり温めてくれます。

② お風呂に、ほんのひとつかみ自然塩を入れてみてください。湯上がりのぽかぽかが長く続くと感じる方もいます。

2-4 疲れが抜けない

朝から調子が出ない、冷房にあたるとだるい、休んでも疲れが抜けない。そんな日が続くことがあります。

からだが冷えて血のめぐりが落ちると、だるさにつながることがあります。ただ、何週間も強い疲れが続くときは、別の病気が隠れていることもあるので、一度は医療機関で相談してください。

暮らしの中では、まず温めることから。

2-4-1 疲れが抜けない日の食卓

これまでの食事とお風呂に加えて、足してみたい野菜があります。

ネギ・ニラ・ニンニク・タマネギなどです。これらの香りの成分(硫化アリル)は、豚肉や大豆に多いビタミンB1の吸収を助けるといわれます。豚汁にねぎをたっぷり、くらいの気軽さで。

3 まとめ

冬の晴れた日の午後、日なたのベンチに腰かけたことはありませんか。背中にあたる日ざしが少しずつしみこんできて、気づくと肩の力が抜けている。足もとには、葉を落とした木の枝が、くっきりと影を落としていました。

冷えは、一日でできたものではありません。だから、ほどくのも一日でなくてかまいません。お腹に手を当ててみる、腹巻きを一枚足す、湯船につかる日を一日ふやす。どれかひとつで十分です。

それから、もうひとつ。からだが冷えている日は、たいてい外にも出ていません。昼のうちに、近くの公園の木のところまで歩いてみてください。歩くと足の裏がポンプのように動いて、めぐりが戻ってきます。冬の木は葉を落として、春まで静かに休んでいます。人も、冬は少しゆっくりでいいのだと思います。

温まることは、休むことのいちばん手前にあります。

そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。

→ 林浴とは──森が、大人の保健室になる

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komorebi 林浴ライフデザイナー 西川えりこ