筆箱の中で、好きな色の色鉛筆だけがどんどん短くなっていった。そんな覚えはないでしょうか。水色だったり、桃色だったり。気がつくとその一本だけが半分の長さになっていて、ほかの色はけずりたてのまま並んでいました。
あのころは、誰に聞かれなくても自分の好きな色を知っていました。大人の塗り絵「コロリアージュ」は、2015年ごろから日本でも広まった、細かい絵柄にひと区画ずつ色をのせていく塗り絵です。塗っているうちに、しばらく忘れていた自分の好きな色に、もう一度出会うことがあります。
この記事では、色の決めかたと、一本の色鉛筆でできるグラデーションの塗りかたを紹介します。気になるところだけ読んでみるのでもかまいません。
1 はじめてのコロリアージュは、手元の色鉛筆で
コロリアージュの本には、たくさんの図柄が載っています。けれど、本を買う前に大切なのは、塗っていて楽しいか、心地よいと感じられるかどうかです。
それを確かめるには、まず気軽に始めてみるのがいちばんです。
色鉛筆は、家にあるものや、100円ショップのもので十分です。
続けてみたくなったら、この後で紹介する本や画材を手に取ってみてください。図案も発色も美しく、塗る時間がいっそう楽しみになります。
2 コロリアージュの塗り方
いろいろな色を織り交ぜて塗るのも楽しいものですが、自分の中で小さなルールを決めて塗るのも、いいものです。
色の好みや、その日の気分に気づくきっかけにもなります。
たとえば、こんな塗りかたがあります。
2−1 テーマカラーを決めてみる
同じ系統の色だけで、一枚を仕上げることもできます。
同じ色鉛筆でも、力の入れかたを変えながら塗り進めると、印象が変わります。
よいところは、次のとおりです。
・色選びに困らない
・たくさんの色をそろえなくてよい(同系色が2〜3本あれば十分)
・仕上がりに統一感が出る
まずは好きな色をひとつ選んでみる。
塗り絵の本をぱらぱらと開いて、今日の気分に合う色で、花をひとつだけ塗ってみるのもいいものです。
2−2 1本の色鉛筆でグラデーションを楽しむ
同じ色鉛筆でも、力を変えると、濃い色から淡い色まで何段階もの色が出せます。
これを使うと、グラデーション(色が少しずつ移り変わる塗りかた)が楽しめます。
たとえば、花びらの根もとを濃く塗り、外側へ向かって力を抜きながら広げていく。葉なら、葉脈のそばを濃く、ふちへいくほど淡くすると、本物の葉のようなふくらみが出ます。
2−3 色を塗り重ねてみる
色と色を重ねると別の色が生まれることは、小学校の絵の具で体験した方も多いでしょう。
色鉛筆でも、色を重ねると、奥行きのある思いがけない色が生まれます。黄色の上に緑を重ねると、日に透けた若葉のような色になります。
力の入れかたを変えると、また違った雰囲気になります。
2−4 画材を変えてみる
同じ色鉛筆でも、メーカーによって、発色や芯の柔らかさは随分と違うものです。
少し色合いを変えてみたいと思ったら、別のメーカーのものを試してみてもいいでしょう。
いつも色鉛筆を使っている方なら、ペンに持ちかえる方法もあります。ペンの発色や塗るときのなめらかさは、色鉛筆とはまた違います。
ペンの選びかたは、コロリアージュに合うペンの選びかたにまとめています。
3 コロリアージュの冊子
手に入りやすいのは、グラフィック社などから出版されている本です(紹介するのは書いた当時、2017年の本です。品切れのこともあるので、書店で確かめてください)。
書店の塗り絵コーナーで、目にしたことがあるかもしれません。
3−1 ひみつの花園
スコットランドのイラストレーター、ジョハンナ・バスフォードの作品で、大人の塗り絵が広まるきっかけになった一冊です。色を塗りこんでいくと、庭に命が吹きこまれていきます。あちこちに小さな生きものが隠れていて、探すのも楽しみのひとつです。
3−2 ねむれる森
「ひみつの花園」の続編です。
おとぎの国のような森が広がり、小さな動物たちが大きく描かれています。
色を入れていくと、眠っていた森が目を覚ます、というコンセプトで作られています。
3−3 ナチュラルガーデン
手軽に始めたい方におすすめです。21×21cmと小さめで、一枚を短い時間で塗り終えられ、持ち歩くのも苦になりません。
一枚ずつ切り離せるので、塗ったものを額に入れて飾ったり、贈りものにしたりもできます。
花や木々、木の実が紙いっぱいに大胆に描かれていて、植物の好きな方にはうれしい一冊です。
3−4 海の楽園
こちらも世界中で親しまれているシリーズの一冊です。魚の群れや貝殻、海賊の宝箱まで、海の世界が広がっています。
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4 まとめ
電車の窓から、重なった山並みを眺めたことはありますか。手前の山は濃い緑、その向こうは少し青みがかって、いちばん奥の山は空に溶けそうなほど淡い色をしていました。どれも同じ木々の緑なのに、遠くなるほど色がやさしくなっていく。あの景色は、自然がいちばん上手に描いたグラデーションなのかもしれません。
塗り絵の上手下手は、誰にも採点されません。一本の色鉛筆の力を少しずつ抜いていくあいだは、急がなくていい時間です。今日は葉っぱをひとつ塗るだけでも十分です。
塗り終えたら、近くの木の葉を一枚、そっと眺めてみる。葉の根もとから先へ、緑が少しずつ移り変わっているのが見えるはずです。
いちばん好きな色を思い出すことは、自分を思い出すことに、少し似ています。
そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。


