日常的にいつも色の中で生きている私たちです。色によって気分が左右されるということもあるのを何気に感じているでしょうか?
この感覚は、例えば緑の深い森の中を歩いているととても落ち着く・・・というような感覚でもあります。
色を活用したカラーセラピーというものも沢山出回っています。それだけ、私たちの心は色に左右されているともいえるでしょう。
あなたに必要な色を巧くセレクトすることによって、気分さえもコントロールすることが可能になるのです。
1 古代からの色の知識
医学の分野において、色は重要なポジションを持っていました。
医学の祖と言われるヒポクラテス(紀元前460~377年)は、4つの元素によって、人間の特徴を定め、男性は火(赤)と風(黄)に女性は地(緑)と水(青)に結びつけていましたことがわかっています。
また中世では、からだの不均衡や病気の治療に使われていました。
ペルシャの医師であるアビセンナ(980~1037)は、著書である「医学規典」の中で次のように著しています。『赤は体液を促す。従って、出血している者は赤い物を一切見てはならない。むしろ、青い物を見ると良い。青色には鎮静効果があり、血液の流れを抑制する』と。
アビセンナは、ヒポクラテスの考え方にも触発されて、色のついた軟膏や包帯、花を治療のために処方するなどもしていました。
また、ルネッサンス時代のスイス人の医師、パラケルスス(1493~1541年)は積極的に患者の治療に色を使っていました。
このように、色は人間に密着したものとして捉えられており、人を癒す重要なものとして捉えられていたことがわかっています。
1-1 色を心に活用した先駆者たち
エドウィン・D・バビット(1828~1905)
カラーヒーリングの先駆者の一人です。1878年に出版された代表作「光と色の原理」があります。この中でバビットはこのようなことを表しています。
色の様々な癒しの効果について述べている中で、「赤色は血液の循環を促し、青色は血液の流れを鎮静させ、オレンジ色と黄色は神経を刺激する」と分類しました。
ここから、停滞しているものは赤色で、炎症や精神的に不安定な状態には青色で、緩下作用としての働きには黄色を使うようにしていました。
このバビットは、いろいろな装置を作っては、治療に活用していたことがわかっています。例えば、クロマリュームと云うものもその一つです。
これは個室の中に患者が入り、色のついたガラスの窓から、差し込む色を浴びるために太陽の光にさらされるといったものです。
こちらは、色における治療の原型として役立っているものです。
ルドルフ・シュタイナー(1861~1925)
オーストラリア人哲学者で教育学者ということもあり、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
物質世界の概念では説明できない霊的な出来事を体験していた人で、霊的な意識とそれを取り囲む宇宙との関わりの理解を育むことも目指した人智学の基礎を築いています。この人智学がベースにあって、シュタイナー教育が広まるようになったのです。
シュタイナー学校では、幼い子どもには明るく暖かな色を、大きくなってくれば比較的寒色をいう具合に、色の活用を子ども達の発達段階に反映させています。
シュタイナー教育について詳しいしくし知りたい方は、下記の書籍を読んでみるのも良いでしょう。
※色彩の本質・色彩の秘密(全訳) 単行本 ルドルフ・シュタイナー (著), 西川隆範 (翻訳)
2 私たちの色に対する反応
光には全ての色が存在するのをご存知ですか?夕立の雨上がりの空に見える虹の色。あれは光の色になります。
この色は、ガラス越しやシャボン玉などでも確認できるのを、すでに知っているでしょう。
色は、脳にも影響をもたらします。
中でも、脳下垂体などの睡眠パターン・新陳代謝・食欲など私たちの身体的機能の他に気分や感情、反応まで調整するホルモンを生成する器官に影響をもたらします。
ここで生成されるホルモンの最も重要なものを2つ挙げますと昼の光によって生成されるセロトニンと夜に生成されるメラトニンになります。
前者は、気持ちを前向きにさせるものになり、後者は鎮静の作用をもたらしよく眠れるようにしてくれます。
最近では、医療以外の機関にも使われています。
例えば、刑務所でピンク色が利用されているのは有名です。囚人たちの攻撃的な行動や暴力行為が少なくなることがわかっています。
ピンク色の優しい「無条件の愛」の色は、激しい怒りでさえ鎮めてしまうのです。
また、学校では黄色を使うことで、学習意欲が高まる効果も出ているのです。黄色は脳神経に目覚めを与えてくれます。頭脳明晰の作用があるのです。
逆に精神的に病んでいる場合や強いストレスを受けている場合は、刺激が強すぎますので避けることをお勧めします。
2-1 色にある心の表現
色は、気分や感情や行動に深い影響をもたらすことがわかっています。そして、日常の会話の中にも色のスパイスが効いているのです。
・青色 「ブルーな気持ちだ」というと孤独で寂しくて、気持ちが内向的な様子になります。
・赤色 「真っ赤になって怒る」とか「闘牛に赤布を見せたように激怒して」という時は、相当に激しく喧嘩腰でいる様子を示します。
・黄色 「臆病な(イエローペリード)」「腰抜け(イエロー)」など、黄色を使った表現は、自分や他人を守るために行動しない人のことを言い表しています。黄色には、「恐れ」という意味もあります。
無意識のうちに使っていますが、何かと色を結びつける表現方法によって、効果的なコミュニケーションが取れているともいえるでしょう。
2-2 気持ちの落ち着く色の働き
色が脳と心に与える影響をこれまでに記してきましたが、あなたがイライラする気持ちから解放されてホッとする色を選びやすいように、挙げてみます。
・緑色 これは、まさに自然の色です。普段はビルの谷間にて、頑張って疲れたとしても、緑の野原や森で過ごすと元の元気を回復することができます。まさに心とからだのバランスをとる色なのです。
・青色 この色は、ご存知の通り空と海の色です。心のざわつきを鎮めてくれます。そして、平和な気持ちにさせてくれる色です。緊張感から解放されて海と空をぼーっと眺めてみる時間は、いらない思考をスーッと流してくれる感覚があります。
・茶色 虹の中にはない色ですが、自然界の色です。そう、土・枯葉・種・木の実の色であり、大地との関わりの深い色です。地に足をつけて揺らぎない気持ちで落ち着いて歩んでいくことをサポートします。
3 環境の色
あなたの自宅のお部屋の中は、あなたが快適に過ごせる色であることが一番です。
例えば、自宅にいる際にどういう気持ちで過ごしたいかによって、選ぶ色も変わってきます。「暖かく迎え入れてくれる雰囲気」が欲しい時は、オレンジ色やピンク色なども良いでしょう。
ただし、緑色でまとめてしまうとリラックスしすぎて、やらなければならないことになかなか手につかないということがあります。あなたのライフスタイルや自宅にいる時の状況に合わせて色を選んでみることをおすすめします。
特に、寝室は青色にすると鎮静化され、ゆっくり休むことができます。もし、暖かい気持ちで眠りたいのであれば、薄いピンク色なども優しさを感じながら休むことができます。
あなたが落ち着く色、そしてその色の部屋にどのくらい過ごしているのか・・・振り返ってみながら、最高のお部屋つくりをしてみてはいかがでしょう。
4 まとめ
色は、単に楽しむものだけではないのです。古くから医学や教育の分野にまで活用されています。それだけ、色が与える影響力が大きいということでしょう。
ということは、身に着ける色にも意味があり、それはあなた自身をコントロールをするために選ばれているともいえるでしょう。
さあ、明日の朝は何色を着て出かけたくなるでしょうか?こう考えると朝が楽しみになります。