夜、布団に入って電気を消したのに、頭の中では明日の段取りが回りつづけている。お弁当のおかず、返していないメール、母の通院の付き添い。からだは横になっているのに、ちっとも休めていない。そんな夜はないでしょうか。
マインドフルネスは、そうやって先へ先へと走ってしまう頭を、「いま、ここ」に戻すための練習です。自分の呼吸や足の裏の感覚、聞こえてくる音に、そっと注意を向けます。うまくいかない日があっても、自分を責めなくてかまいません。
この記事では、マインドフルネスの始まりと、忙しい日でも取り入れやすい、座る・歩く・音を聞くの三つのやりかたをご紹介します。まずは二分だけ、試してみてください。
1 マインドフルネス瞑想の始まり
「マインドフルネス」は、瞑想を核としたメンタルトレーニングになります。このプログラムを「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」として開発したのが、アメリカ・マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバットジンです。
ジョン・カバットジンは、禅・ヨガなどを通じて様々な瞑想体験を実践していた人です。その実践の中から、1979年、瞑想を医療に役立てるアイデアとして生み出されたのが、「マインドフルネスストレス低減法」です。
このプログラムにある瞑想というのは、宗教から切りはなした瞑想で、慢性的な痛みやストレスを和らげることを目的としていました。
今、あらゆる情報の中にあるマインドフルネスの瞑想方法は、比較的簡単に取り入れられるものが主流になっていますが、この時のプログラムは、8週間、毎日45分ほどの瞑想を続けながら、セッションに参加し、瞑想についての理解を深めていくものでした。
2 マインドフルネス瞑想を取り入れるメリット
元々は医療の場で生まれたものですが、いまでは企業の研修や、スポーツ選手のトレーニング、学校などにも取り入れられています。
時間に追われる毎日の中で、瞑想はまどろっこしく感じるかもしれません。それでも、続けた人の多くが次のような変化を感じています。研究でも、ストレスとのつきあいかたに役立つという報告が重ねられてきました。
① 目の前のことに集中しやすくなり、あわてずに動ける
② 考えごとがぐるぐる回りつづける時に、いまに戻る手がかりになる
③ ストレスや不安、長びく痛みとのつきあいが、少し楽になる
④ 寝る前に行うと、寝つきが楽になったと感じる人もいる
⑤ 自分の心とからだの状態に、早めに気づけるようになる
なお、うつ病などで治療を受けている方は、始める前に主治医に相談してみてください。瞑想は治療のかわりではありません。
3 マインドフルネス瞑想の方法
3−1 まずは2分、呼吸に注意を向けてみる
瞑想というものが、あまり日常的でない方がきっと多いのではないでしょうか?
そういう方でも取り組める、簡単で短時間で行う方法です。
① 自分にとって楽な姿勢で座ります。
② 目を軽く閉じます。
③ からだの力を抜きながら、腹式呼吸を行います。(吐くときは、お腹を凹ませて、吸うときは、お腹を膨らませます)
④ 自分の呼吸に集中してみます。
⑤ ③④を2分間行います
3−2 慣れてきたら、心の動きを眺めてみる
上記の導入法がスムーズにできるようになったなら、次の段階を試してみてください。
基本の姿勢やスタイルは一緒です。
・自分にとって楽な姿勢をとる
・目は軽く閉じる
・からだの力を抜きながら、深い腹式呼吸を行う
⑴ ここからは、あなたの心の動きを感じていきます。
あなたが今感じている感情や頭の中を通り過ぎる言葉や光景があったとしたら、客観的に受け止めていきます。
⑵ もし、途中で心やからだに変化を感じたならば、その状態を受け止めていきます。
⑶ 絶えず、ゆっくり腹式呼吸をしていきます。
忙しい時もあるでしょう。その時は、2分くらいの短い時間で行います。慣れてきて、時間にもゆとりが持てるようになったら、10〜15分に延ばしてみてもかまいません。
3−3 歩行瞑想の方法
中には、座って瞑想の時間を取るのも苦手な方がいます。
もし、あなたがそのタイプの方でしたら、この方法がおすすめです。
歩行瞑想は、歩きながら行う瞑想のことを言います。これまでに挙げた瞑想は「呼吸」や「心の変化」に集中しました。
歩行瞑想は、「歩行」に集中します。足の裏が地面を離れて、再び着地するまでの足の感覚に注意を向けてください。
ほんの5分くらい、休憩時間や帰り道、近所の公園など、安全に歩ける場所で試してみてください。
3−4 音を利用した瞑想
音は、どんな種類の音でも構いません。例えば、近くを走る車の音や人の声、窓の外の鳥の声や、風に揺れる葉の音かもしれません。
または、あなたが心地よく感じる音楽がある環境であるならば、それも良いです。
心を一旦静かにして、耳に入ってくる音に注意を向けてみます。ただそれだけなのです。
3−5 短い時間でも、思い出した日に
お金をかけずに、心とからだの状態に気づける方法が、マインドフルネス瞑想です。ストレスとのつきあいかたを、少しずつ楽にしてくれます。
通勤の時間や昼休み、眠りに入るちょっと前のひと時に、試してみてください。
イライラした時に、ひと呼吸おいて自分に戻れるようになるのも、うれしい変化です。
4 まとめ
小学生のころ、帰り道に落ち葉を踏んで、カサカサ鳴る音を楽しみながら歩いたことはありませんか。どの葉がいちばんいい音がするか、それだけに夢中で、宿題のことも忘れていました。いま思えば、あれはちょっとした歩く瞑想だったのかもしれません。
マインドフルネスは、頭で理解するより、からだで少しずつ覚えていくものです。座るのが合う人もいれば、歩くほうが落ち着く人もいます。毎日できなくても、思い出した日に二分だけでかまいません。
もし外を歩けるなら、街路樹や公園の木の下を選んでみてください。足の裏の感覚、葉ずれの音、土や木の匂い。注意を向ける先が、自然の中にはたくさんあります。
何も考えない時間をつくろうとしなくても、いま聞こえている音に耳をすますだけで、心はちゃんと休んでいます。
そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。


