曼荼羅塗り絵を、毎日の小さな休息に──塗りかたと色の選びかた

長電話をしながら、手もとのメモ用紙の端に、気づけば丸やうずまきをぐるぐる描いていた。そんな覚えはありませんか。話が終わって紙を見ると、自分でも描いたことを忘れていた模様が、いくつも並んでいたりします。

手が勝手に円を描いているあいだ、頭は少しだけ休んでいます。曼荼羅(マンダラ)塗り絵は、あのぐるぐるの時間を、自分のためにちゃんと用意してあげるようなものです。

ここからは、宗教の図にかぎらない身近なかたちとして、「マンダラ」と書いていきます。塗りかたと色の選びかたを、毎日の小さな休息として、のぞいてみるだけでかまいません。

1 マンダラの円が教えてくれること

マンダラの基本形は円の形をしています。この円とは、自然のライフサイクルを表しています。

例えば、植物は種子から始まります。種子は、土や地球、太陽によって育てられ、成長し、花を咲かせ、実を実らせます。
そして、やがて枯れていき、大地を肥やすのです。さらに、新しい種が育つ・・・というサイクルがあります。

これは、植物だけにとどまることなく、私たち人間においても同じことなのです。
マンダラの円は、このあたりまえのめぐりを、静かに思い出させてくれます。

1−1 曼荼羅(マンダラ)に触れるということ

マンダラの円は、私たち自身のめぐりでもあります。

日々の暮らしの中で、あまりの多忙さやストレスに沢山さらされているということは、
視野が狭くなり、今ある自分を見失いがちになることもあるでしょう。

自分の願いとかけ離れた毎日を送っているかもしれない、とふと感じた時、マンダラを塗る数分間は、心とからだを同じ場所に戻してくれる、小さな休み時間になります。

1−2 なぜ曼荼羅(マンダラ)なのか?

マンダラは、心理療法やセラピーの場でも使われるようになりました。

また、リラックスした時間を持ちたいという方の中で、マンダラ塗り絵に取り組む人も多くなってきています。

その先駆者がいます。
心理学者のカール・ユングです。ユング心理学という名称は、耳にしたことのある人もいるでしょう。
ユングは、患者さんにも円の絵を描いてもらい、そこにその人の心の状態があらわれることに注目しました。

ユング自身も、心が大きく揺れていた1910年代の終わりに、毎朝ノートに小さな円を描きつづけ、それが自分を立て直す助けになったと書き残しています。

いまでは、心理療法やアートセラピー、病院の緩和ケアの場などで、心を落ち着ける時間として取り入れられることもあります。
なかでもいちばん気軽に始められるのが、マンダラ塗り絵です。

2 曼荼羅(マンダラ)塗り絵の活用法

マンダラ塗り絵には、心の中に絡まっているものを、ゆっくりほどいていく力があります。
上下も左右もそろった形と、同じ模様のくり返しが、手を動かすリズムを心地よくしてくれるからだと言われます。

塗り方は、誰に指示されるものでもありません。
あなた自身が、心地よく取り組むことができるというのが一番なのです。
急がず、塗りたいところから塗ってかまいません。

3 塗っているあいだに、起きていること

マンダラに色をつけていると、手もとに気持ちが集まって、頭の中のおしゃべりが少しずつ静かになっていきます。
細かな区画をひとつずつ塗っていくうちに、今日の自分の気持ちに気づくこともあります。
塗った人からは、こんな声がよく聞かれます。

・心を落ち着けることができる
・感情が静まる
・心の平穏と充足感を味わえる
・ストレスや不安を軽減できる
・終わったあと、少し気分が明るくなる
・子どものころのように、時間を忘れられる

感じかたは人それぞれです。
上手に塗ろうとしなくてかまいません。
こうなりたい、という気持ちを少し脇に置いて、ただ手を動かす。それだけの時間が、毎日の中には意外とありません。

4 曼荼羅(マンダラ)塗り絵に使う色のこと

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「色」は、人それぞれの思い出や気持ちと結びついています。
子どものころ好きだった色を、ひとつ思い出してみてください。
その色にどんな感情が湧きますか・・

色には、それぞれの好みの他に、文化的な背景もあり、心理学的な要素も含んでいます。
詳しくは、こちらをご覧になってみてください。

「曼荼羅アートと色との関係について」

曼荼羅を塗るとき、どの色を選ぶ?──色が映す、いまの気持ち

色えらびには、その日の気持ちが、思いのほか素直にあらわれます。
選んだ色に、正解も不正解もありません。今日はなぜこの色なんだろう、と眺めてみるだけでかまいません。

5 まとめ

雨上がりの帰り道、水たまりに落ちたしずくが、輪をいくつも広げていくのを、傘をさしたまましゃがんで見ていたことはありませんか。中心からそっと広がって、消えて、また次の輪が生まれる。見ているうちに、急いでいたことを少し忘れていました。

マンダラ塗り絵も、何かを手に入れるための時間ではありません。一日に一区画、五分だけ。色を一つ選んで、塗って、手を止める。そのくり返しで十分です。

塗り終えたら、近くの公園の大きな木の下に立って、真上を見上げてみるのもいいかもしれません。幹を真ん中にして、枝が四方へ広がり、空にひとつの円をつくっています。木もまた、大きなマンダラです。

上手に塗れなくても、ただ塗っていた時間が、今日のあなたを休ませてくれています。

そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。

→ 林浴とは──森が、大人の保健室になる

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komorebi 林浴ライフデザイナー 西川えりこ