電車に乗り遅れた朝に、職場で小さな行き違いがあって、帰りにはスーパーのレジで一番進まない列を引いてしまう。そんな日が、ときどきありませんか。
一つひとつは大したことではないのに、重なると、胸のあたりにざらざらしたものが溜まっていきます。家に着いて靴を脱いでも、それがなかなか出ていってくれません。
昔の人は、そういうときに「区切り」をつけていました。外の空気を吸う、汗を流す、塩で手を洗う。気持ちを切り替えるための、ささやかな作法です。
ここでは、今日からひとつだけ試せる、小さな切り替え方を集めてみました。全部でなくてかまいません。気になったものを、ひとつだけ。
1 誰でもできる、心とからだの切り替え方
すぐにできることが大切なポイントです。そして、簡単であることです。これでリフレッシュし新たな心持ちでスタートできるならやらない手はありません。
1-1 お散歩ついでに、外の空気を吸う
身近なところにある自然の中・・例えば、海や山での清々しい経験はあるでしょう。この環境の中で新鮮な空気を思い切り吸い込んでみたり、両手を広げて伸びてみたりしたことは、誰にでもあるでしょう。
肺と言わずからだ中に新鮮な空気が行き渡り、からだの中がすっかり入れ替わったような気がします。これが、いちばん簡単な切り替え方です。
1-2 手軽にからだを動かして、汗をかく
健康のために走ったり歩いたりする人は、年代を問わず増えています。毎日のウォーキングを欠かさない高齢の方も少なくありません。
このような運動で流れる「汗」も、気持ちの区切りになります。汗をかいて喉がカラカラになった後は、美味しいお水が欲しくなりますよね。出したあとに、きれいなものを取り入れる。それだけで、からだは一度リセットされたように感じます。
2 自分でできる、気持ちの整え方
気持ちの整え方は、誰かにしてもらうものばかりではありません。自分でできることなら、いつでも取り組めますし、お金もかかりません。
2-1 感謝の笑顔、していますか?
「最も無駄な1日とは、一度も笑わなかった日である」セバスチャン・シャンフォート
これを読んでどのように思われますか?そして、笑顔を見てどう思いますか?笑顔を見て、嫌な気分になる方はいないでしょう。楽しいから笑うだけでなく、笑顔でいるから楽しいことに気づきやすくなる、ということもあるのかもしれません。
「笑う門には福来たる」
笑顔の人のまわりには、自然と人が集まってきます。更に、「一笑一若、一怒一老」とも言われています。笑うことがからだにいい影響を与えることは、研究でも少しずつわかってきています。特別な才能がなくても、笑顔でいることは誰にでもできます。
今日から・・・いや、たった今から実践してみましょう。まず、鏡に向かって「笑顔チェック」をしてみましょう。朝や夜、そして休憩時間に。そして、感謝の気持ちを込めて、笑顔で「ありがとう」と1日を締めくくってみましょう。
明日が気持ち良く笑顔でスタートできます。
2-2 宝地図を作ってみましょう!
これは、夢をかなえる方法として知られていますが、あなたの人生を満たす最高のツールでもあります。望む仕事・結婚・人間関係・お金・心の平安・・これらが反映された写真を集めて、宝地図を作ってみましょう。ここでのポイントは、宝地図の真ん中にあなたの最高の笑顔の写真を貼ることです。
人は、毎日目にするものに、少しずつ影響を受けていくものです。
2-3 自分の手で「手当て」
「手当て」という言葉があります。小さい頃、お母さんに痛いところにそっと手を当ててもらった思い出があるでしょう。手のひらには「当てるだけでも心を癒す」不思議な力があります。触れられているだけで、心がホッとするのです。
これは、特別な人だけができることではありません。次のようなことをちょっと試してみてください。
まず、手を10回ほどこすり合わせてみます。手のひらに意識を向けて、数回深呼吸します。手のひらに温かさを集めるつもりで、ゆっくりこすり合わせるのがポイントです。
すると、手のひらがじんわりと温かくなってきます。
その手のひらで、からだの痛いところや気になる場所に手を当ててみましょう。手のぬくもりが、ゆっくり伝わっていくのを感じてみてください。なお、痛みが強いときや長く続くときは、我慢せずに医療機関に相談してください。
2-4 昔から使われてきた塩
塩は、神事や仏事で使われるように、昔からお清めの道具として利用されています。昔の人にとって、塩は場を改める「区切り」の道具だったのでしょう。
2-4-1 家の水回りと塩
家が整うと、からだも心もスッキリしてきます。ただ、ちゃんと掃除をしているのに、なんとなく空気が重く感じることもあります。このような時は、部屋の四隅に目立たないくらい少しの塩を置いてみるのも、気持ちの区切りになります。
特に気にかけたいのが水回りです。台所やお風呂場、洗面所がきれいだと、それだけで家じゅうの空気が軽く感じられます。
お掃除の最後に、ひとつまみの自然塩を排水と一緒に流すのは、「ここでおしまい」という区切りの合図のようなものです。不要なものを出すと、新しいものが入る場所ができます。
2-4-2 塩湯で手足を洗う
塩は、からだの区切りにも使えます。どうぞ信頼できる自然塩を見つけて試してみてください。特に「今日は嫌な気がしたな」「疲れたな」という時は、自然塩で手足を洗います。
まず、自然塩を適量、手に取りぬるま湯に溶かして、手と足首から下、足の裏を丁寧に洗います。手先・足先が温まって、一日の疲れがほどけていくような感じがあります。
湯船にひとつかみの自然塩を入れる塩風呂も、からだが温まりやすく、疲れた日にはおすすめです。
3 続けていると、気づくこと
外の空気を吸う、汗をかく、笑う、手を当てる、塩湯で手足を洗う。どれも、一つひとつは小さなことです。
続けていると、朝の目覚めが少し軽くなっていたり、人の言葉に振り回される時間が短くなっていたりすることに、ふと気づくかもしれません。
一気に何かが変わるわけではありません。少しずつ、自分の変化に気づいていければ、それで十分です。
4 まとめ
子どものころ、泥だらけで遊んで帰ってきて、玄関で「手を洗ってきなさい」と言われた夕方を覚えているでしょうか。
石けんの匂いと、冷たい水道の水。手を拭き終わるころには、外で転んだことも、友だちと言い合いになったことも、もう半分くらい忘れていました。
大人になると、ああいう区切りをつけないまま、次の用事へ、次の日へと進んでしまいます。よくないことが続くのは、運が悪いからというより、前の日のざらざらを抱えたまま走り続けているからなのかもしれません。
抱えるものを増やすより、ときどき手放す時間を持つ。外に出て、深く息を吸うだけでもかまいません。
帰り道の木の下で、少しだけ立ち止まってみる。それだけで、からだのほうが先に区切りをつけてくれることがあります。
そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。


