曼荼羅とは、アートや図案だけのものではありません。宗教的なものだけでもありません。もっと壮大で、奥が深いものです。そして、私たち人間は、曼荼羅の中で生きています。
そう考えると、ここでは敢えて「マンダラ」と表記していくことが適当となるでしょう。
私たちの身近にあって、気づいていないかもしれない、マンダラの世界をご紹介します。
1 マンダラの広い世界
「マンダラ」の語源は、サンスクリット語に由来していますが。このマンダラには、ダイナミックな世界があるのです。
宗教観というものを超えて、人の関わってきたマンダラというのは、遡ること先住民芸術にも表れています。
新石器時代の遺跡に刻まれている模様は、円や渦巻きなどがとても多いのです。そして、マンダラは単なる形ではないということです。
より神聖で、超越したものだからこそ、地球上のあちらこちらで見られるのです。そして、私たちは、マンダラの中に住んでいる・・いつもマンダラといる・・そう感じられるようになるでしょう。
1−1 宇宙のシンボル マンダラ
宗教的な見地からも、〝マンダラは宇宙そのものである〟というような表記と意味がなされています。よく考えてみれば、私たちの住んでいる地球は丸です。
そして、丸い太陽の周りを回っています。最も近い惑星の月も、丸い形をなしています。これらの星々は、丸く渦巻く銀河系に属しているのです。
1−2 万物を構成している形もマンダラ
「原子」というものを聞いたことがありますか?
原子とは、万物を構成している最小の粒子です。これは、正の電荷を帯びた原子核と負の電荷を帯びた電子から成るものです。
これは、本当に極微というくらいの大きさですので、特殊な顕微鏡でないと見ることができません。原子核を中心とした構造は、まさにマンダラと言えるもので、物質はこれが集まったものなのです。
2 自然界にあるマンダラ
庭にある、もっとも美しいマンダラといえば、花々でしょう。まるで、マンダラを持って装っているかのような姿です。そして、柑橘やらの果実を半分に切ってみると、そこにはマンダラがあるのです。
それは、野菜にもありますし、ピーマンやキュウリの断面にもみられます。思わぬところで、マンダラに囲まれて暮らしているということに気づくでしょう。
2−1 木は、成長するマンダラ
木にもマンダラは存在します。
古木の断面図には、年輪を通して木の年齢さえわかります。木は、毎年新しい年輪をつけます。年輪の明るいほうは、春に形成されたもので暗い部分は、夏の終わりか、秋の初めに形成されます。
そこには、生育環境や、日照なども見て取ることができるのです。年輪を見ると、どんな環境でも、木々がじっと耐え忍んできた様子などがわかるのです。
2−2 海の中のマンダラ
マンダラとは、アートや図案だけのものではありません。宗教的なものだけでもありません。
もっと壮大で、奥が深いものです。
そして、私たち人間は、マンダラの中で生きています・・・と最初に書いてあります。
透明に透き通るクラゲは、マンダラを描きながら海に漂います。タコも上から見れば、左右対称のマンダラになります。ヒトデや、カシパンウニも美しいマンダラです。
2−3 地上のマンダラ
からだの中心から、放射線状に手足が伸びている蜘蛛は、その形状をしているだけでなく、捕食するための巣もマンダラ様です。丸くて硬い亀の甲羅は、美しいマンダラを呈しています。
2−4 気象にも現れるマンダラ
台風の様子を天気予報などで見たことはあるでしょう。右方向に渦を巻いています。この破壊的な様子の中心にあるのは、静かな台風の目になります。
自然界にある「静と動」を表しているようにさえ見えます。これもまた、マンダラと言えるでしょう。
また、雨粒は水の塊にぶつかると、同心円のマンダラを描きます。水たまりで見る様子のことです。雪もまた、マンダラを表しています。雪の結晶は自然界が作り出した美しい芸術です。
雪の結晶とマンダラについては、こちらの記事も御覧ください。
3 私たちの中にあるマンダラ
鏡をどうぞ覗いてみてください・・
ここに、あなたのマンダラは写っていますか?何を言っているのかわからないですか?
あなたの瞳です。そこにもマンダラが存在しています。実は、私たちのからだそのものがマンダラなのです。
3−1 からだとマンダラ
レオナルド・ダ・ダヴィンチは、人間のからだとマンダラの関係を図で表しました。そこで、示されたのが、人体は円と正方形に示される、自然の調和を具現化したものです。
それが、1492年に描かれた〝ウィトルウィウス的人体図〟です。円で囲まれた人間は、両手と両足を広げ、臍がその中心にあります。ダ・ヴィンチは、人体の機能は宇宙の機能と関連していると信じており、人体は世界の雛形と考えていました。
3−2 からだの中にあるマンダラ
人間は、子宮というマンダラに宿ります。子宮の中で、受精卵は細胞分裂を繰り返して、放射状に成長していきます。
そして、私たちのからだの中でもっともわかりやすいマンダラは、きっと眼球でしょう。眼の虹彩には、瞳孔から放射状に伸びる筋があります。
3−4 マインドにあるマンダラ
心の全体性を表しているということでマンダラの研究をした心理学者がいました。無意識の研究の先駆者である、スイスの心理学者カール・ユングです。
ユングは、マンダラと向き合うことで、大きな癒しの効果があることに気付きました。また、マンダラを描き、色を付けることが、ユング自身が無意識の内に宿る潜在能力や、エネルギーに通づることができたのです。
つまり、ユングにとって、マンダラと向き合うことは、自我探求の旅であり、本当の自分になろうとすることだったからです。マンダラの中心のみが自分というのではなく、描いたマンダラそのものが自分だということ考えました。
このユングの個人的な経験は、ユング自身が著した「赤の書」に記されています。
4 まとめ
ストレス社会の真っ只中で生きている私たち人間です。
マンダラを描くと、自律神経のバランスが取れる・・・そんなことが言われるようになって、マンダラを塗ってみたり、描いてみたりする人が多くなってきました。
これは自律神経を司る、視床下部のみの問題ではないということが、お分りいただけるでしょう。そもそもが、私たちがマンダラで成り立っているのです。
マンダラを塗ることや描くことで安定するというのは、本来の私たちを取り戻すとか、本来のあるべき姿に気づくということなのかもしれません。
もっとも美しいマンダラは、私たちそれぞれの中にもっているのです。