夕方の四時ごろ、気づくと引き出しのクッキーに手が伸びている。食べたあと少しだけ気がまぎれて、でも一時間もしないうちに、なんだか落ち着かない。家族のちょっとしたひと言に、思っていたより強い声で返してしまう。
イライラの理由は、たいてい外にあるように見えます。言うことを聞いてくれない誰か、思いどおりに進まない段取り。でも、その日の朝ごはんが菓子パン一つだった、昼は急いでうどんだけだった、ということも、案外いっしょに関わっています。
この記事では、多くの人が好きな「白くてやわらかいもの」、つまり粉ものと砂糖の話をします。やめましょう、という話ではありません。知っておくだけで、甘いものに手が伸びた時に「ああ、いま疲れているんだな」と気づけるようになります。
1 粉食って好きですか?
1-1 朝ごはんから、少しだけ意識してみる
日本でパンなどの粉食が一気に広まったのは、戦後のことです。学校給食や、欧米の食生活が入ってきたことがきっかけになりました。
今現在も、朝にはコーヒーとパンという方も少なくはないでしょう。朝のこんがり焼けたトーストに香り高いコーヒー。まさに至福のひと時を感じられることもあるでしょう。
ただ、毎朝それが続いているなら、ときどき、ごはんとお味噌汁の朝に替えてみるのもひとつです。昔ながらの日本の朝ごはんとは、ずいぶん違う組み立てだからです。
パンが悪いということではありません。何を食べるかを、たまに自分で選び直してみる。それくらいの気持ちで読んでみてください。
1-2 粉食とは?
パンは代表的な粉食です。なかでも気をつけたいのは、次のようなものです。
・オーブンで焼いた粉食
・油や脂肪分と組み合わせた粉食
つまり、パンの他にクッキー・ビスケット・マフィン・ケーキ類です。どれも、精白した小麦粉に、砂糖や油脂がたっぷり合わさったものです。
では、下記のものはどうでしょうか・・・
・上新粉の団子。
・せんべい
こちらも粉が原料ですが、日本人の主食である「米」の粉です。油脂が少ないぶん、焼き菓子よりは軽く食べられます。
パン好きの方には耳の痛い話かもしれません。禁止ではなく、どう付き合うかを選ぶためのヒントとして、続きを読んでみてください。
1-3 お腹が重いと、気持ちも重くなる
菓子パンやクッキーを食べたあと、歯や口の中にねっとり残る感じがしたことはないでしょうか。
精白した小麦粉や砂糖、油脂の多い食事が続くと、食物繊維が足りなくなりやすく、お通じが滞りがちになります。
お腹が張って重い日は、それだけで気持ちも晴れにくいものです。便秘でなんとなくイライラする、というのは多くの人に覚えのあることではないでしょうか。
粉ものを少し控えて、ごはんや野菜、海藻、豆などを増やしてみる。お腹が軽くなると、からだの「滞らない」感じが戻ってきます。
すっきりしないことを「わだかまりが残る」と言います。昔の人も、お腹の重さと気持ちの重さを、どこかで重ねて感じていたのかもしれません。お腹が軽い日は、「ま、いいか」と流せることが少し増えます。
1-4 理想的な粉食
どうしても粉っぽいものが食べたい時もあるでしょう。そんな日は、おやつをお団子やおせんべい、ぽんせんべいに替えてみるのもひとつです。
パンを食べたい時は、全粒粉やライ麦のパンを選んでみてください。食物繊維が多く、よく噛むぶん満足感も残ります。
2 砂糖の上手な摂り方
甘いものがむしょうに欲しくなるのは、たいてい、お腹がすきすぎている時や、疲れている時です。食事の間隔をあけすぎず、血糖値の波を小さくしておくと、甘いものに手が伸びる回数も自然と減っていきます。
空腹のときに甘いものをたくさん摂ると、血糖値が急に上がり、それを下げようとインスリンがたくさん出て、今度は急に下がります。この下がり際に、だるさや眠気、落ち着かなさ、イライラを感じることがあります。
甘いものを食べた一時間後に、かえってぼーっとしたり、集中できなくなったりした経験はないでしょうか。気持ちの浮き沈みが大きい日は、甘いものの摂りかたを少し振り返ってみるとよいかもしれません。
2-1 甘いものはここから摂れる
砂糖をやめるのは大変ですが、甘みの摂りかたを替えることはできます。いくつか挙げてみますので、続けられそうなものを選んでみてください。
2-1-1 スーパーに並ぶ甘味料
砂糖の棚に並んでいるのが、甜菜糖(てんさいとう)です。砂糖大根とも呼ばれる根菜から作られ、やさしいコクがあります。ただ、甜菜糖も砂糖の仲間なので、量を控えめにすることは変わりません。
2-1-2 昔ながらの甘味
米と米麹から作る甘酒は、「飲む点滴」と呼ばれることもあり、ブドウ糖やアミノ酸、ビタミンB群を含みます。砂糖を加えなくても、米のやさしい甘さがあります。ただ、糖分はしっかりあるので、小さめのコップ一杯くらいを目安にしてみてください。
市販されているものも沢山ありますが、炊飯器などでも簡単に作ることができますので試してみてください。夏場は凍らせてシャーベットにしても美味しくいただけます。
2-1-3 食品そのものから摂る甘味
食品そのものが甘いものもあります。
例えば、小豆・かぼちゃ・サツマイモ。そして、ちょっとつまむのにはドライフルーツも良いでしょう。ただし、砂糖でコーティングしていないものがベストです。アーモンドなどのナッツ類もよく噛むことで甘味が広がります。
おやつをこうしたものに少しずつ替えていくと、血糖値の波がおだやかになり、イライラの波も小さくなっていきます。
3 まとめ
子どものころ、学校から帰ると、台所にふかしたさつまいもが置いてあった。そんな記憶のある方もいるかもしれません。新聞紙の上で湯気を立てていて、割ると中が黄色くて、砂糖なんて入っていないのに、ちゃんと甘かった。
あのころのおやつは、たいてい、それで足りていました。
粉ものや砂糖を、すっかり断つ必要はありません。好きなパンを楽しむ朝があっていいし、ケーキでお祝いする日もあっていい。ただ、夕方になると決まって甘いものが欲しくなるなら、それは「お腹がすきすぎている」「疲れている」という、からだからの小さな知らせかもしれません。
そんな日は、クッキーの袋を開ける前に、お茶を淹れて窓を開けてみる。ベランダに出て、外の空気を吸ってみるだけでもかまいません。夕方の風が少し冷たくなってきたことや、どこかの家から夕ごはんの匂いがしてくることに気づけたら、それはもう、ひと息つけているということです。
甘いものの代わりに欲しかったのは、もしかすると、その数分の休み時間だったのかもしれません。
そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。


