心の中がいっぱいになって余裕がなかったり、頑張っても報われなかったり、なんだか満たされなくて悲しくなってみたり・・・そういう時に掛けてもらいたい言葉がここにあります。
不朽の名作「星の王子さま」です。子どもの頃に読んだ方もいるでしょう。しかし、歳を重ねるごとに感じ方や捉え方が変わるのが、この名作なのです。
この中にある言葉の魔法に触れてみると、心がポカポカ温かくなるのを感じるでしょう。
1 「星の王子さま」の誕生秘話
1943年サン=テグジュペリの「星の王子さま」は子供の心を忘れてしまった大人に向けて書かれたものです。
サンテグジュペリは、第二次世界大戦中にユダヤ人の親友レオン・ヴェルトに捧げるためにこの本を書いたと言います。
1−1 レオン・ヴェルトとは誰?
最初のページにある、献辞の中に出てくる人物の名前です。
彼に対しての3つ目の大事なわけに「今、フランスに住んでいて、おなかを空かせ、寒い思いをしているので、なんとかなぐさめてあげたいのだ・・」とあります。
レオン・ヴェルトは、サン=テグジュペリよりも22歳年上でしたが、親友でした。第1次大戦の経験から、平和主義者でした。また、ユダヤ人であったために、ナチスの弾圧を避けてフランス東部のジュラ山脈にあった山荘に隠れていたということも伝えられています。
さらに続いて、「・・・納得してくれないなら、この本は昔子どもだった頃のその人に捧げるということにしたい。大人だってはじめは子どもだったのだから・・・」とあります。ここから読み取れるのは、純真無垢だった子どもの頃を思い出して・・という風にもとれるのです。
2 ドキッとする王子さまの言葉
純真無垢な子どもの言葉という風に感じる方も多くいます。子どもは、ごまかさない・・・自分の心に正直・・・・そして、大人も昔は子どもだったということに「ハッと」させられるのです。
感性豊かな表現がちりばめられています。
○ 「誰も自分がいる場所に満足できないのさ」
「みんな自分がいる場所で満足できないの?」と訊ねる王子さまに転轍手が言った台詞です。どのように感じるでしょう?
すでに満たされているのに気づいていないかもしれないし、満たそうとせずにハナから諦めているのかもしれないようにも受け取れます。ちょっと悲しい大人の性質を子ども目線では、このように表現されるのでしょう。
○ 「子どもだけが自分が何を探しているか、知っているんだ」
この場面では、列車の乗客は寝るかあくびをして、子どもだけが窓に鼻を押し付けているという状況です。転轍手の話を聞いて、王子さまはポツリとこのように言いました。
大人は「自分がなにをすべきか、使命は何なのか」を忘れがちで、子どもは自分のやりたいことをしっかりと持っているように思える言葉です。
気はずかしいかもしれませんが「夢」を持っていいた子どもの頃を思い出す一文です。
○ 「みんなが探しているものはたった1本のバラやほんの少しの水の中に見つかるのに……」
本当の探しもの(=幸せ)離れたところではなく、身近な場所やありきたりな場所にあるものです。若しくは、自分の中にあるということも考えられます。それが分からないとしたら「目には見えない、心で探さないとだめ」だからと王子さまはこのように付け足しをしています。
3 ハッとさせられるキツネの言葉
○ 「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。一番大切なことは、目に見えない」
キツネが伝えた秘密です。目に見えるものばかりが真実ではないということを伝えています。そして、見えないところに最も大切なものが隠されているということを王子さまに伝えています。
○ 「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
王子さまは、一本のバラを星に置いてきてしまいました。それはバラのわがままに耐えられなくなったからなのです。そして地球で何千本ものバラが咲いている庭を見つけてしまいます。「バラはこんなにあったんだ!」と悲しくなるのです。
しかし、王子さまは気づきます。いくら何千本ものバラが咲いていても、自分の関わってきた、1本のバラに対する思いは強く、他のたくさんのバラには叶わないことを・・・それは「バラに費やしてきた時間が違いだよ」とキツネが言っています。
○ 「人間たちはもう時間がなくなりすぎて、ほんとうには、何も知ることができないでいる。何もかも出来上がった品を店で買う。でも友達を売ってる店なんてないから・・・」
キツネは、いきなり遊びに誘う王子さまに、このように伝えてます。さらには、友達が欲しいなら「がまん強くなること」と伝えます。
出来上がったものはないのです。関係性は、友情であれ、愛情であれ、時をゆっくりと紡いで、お互いを理解し、関係を育んでいきながら信頼関係を築いていくことなのだということを伝えてるのです。
本当の友達というのはこのように作っていくということがこの場面で表されています。
4 まとめ
サン=テグジュペリは、「星の王子さま」の中では、愛情を表す言葉をたくさん散りばめられています。
愛を表現する難しさやもどかしさもあります。背景には、妻のコンスエロとは何度も離婚危機に陥るも、愛する気持ちが強く最後まで別れなかったということがあります。恋愛経験が豊富な彼だったからこそ、数多くの“愛の名言”があるのです。
そして、いつの時になっても、国境を越えて「大人」の心を癒し続けています。