新しい職場に移った春。親の通院につきそうようになった年。子どもが家を出て、急に静かになった台所。慣れない毎日に合わせようとがんばっているうちに、いつのまにか肩に力が入ったまま暮らしている。夜、湯船につかって、一日じゅう奥歯をかみしめていたことにようやく気づく。そんな日に覚えはないでしょうか。
ストレスとうまくつきあえる人もいれば、そうでない人もいます。どちらでもかまいません。ただ、張りつめた状態が長く続くと、からだはどこかで悲鳴をあげます。
ここでは、ハーブティーや香り、花のしずく、そして森や日の光といった、植物や自然の力を借りた休みかたを集めました。全部を試さなくていい。気になるものをひとつ、手に取ってみるくらいでかまいません。
1 ストレス解消に役立つホリスティックケア
ホリスティックとは、「まるごと」「全体」という意味の言葉です。
胃腸・肺・筋肉・・などといった人間を形成する一部分だけに対処するものではなく、心・からだ・思考・精神・環境などの私たちを取り巻くあらゆる面に目を向けてケアすることをいいます。からだが本来もっている、回復しようとする力を大切にする考えかたです。
ここには、各国の伝統医学や心理療法、自然療法・・・などといった各種代替療法を総合的、体系的に統合した治癒形態を取るものをいいます。
1-1 アロマセラピー ~植物の香りを借りる~
植物に含まれる芳香成分(精油)を抽出し、ボディケアや美容やリラクゼーションなどに活用する自然療法の一つです。いい香りをかぐと、ふっと肩の力が抜ける。その感覚を、暮らしの中で借りるものです。
1-2 メディカルハーブ
薬草や香草と呼ばれるハーブです。ハーブに含まれている多くの成分がからだと心の不調和に働きかけます。ただし、植物にも合う・合わないがあります。薬を飲んでいる人や妊娠中の人は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してから使ってください。
1-3 フラワーレメディー ~花のしずくで気持ちに向き合う~
1930年代にイギリス人医師のエドワード・バッチ氏によって考案された療法です。38種類の野生の花などから作った液体を数滴、心の状態に合わせて飲み、感情のケアをするというものです。
1-4 森林療法と日光セラピー
木々のあいだを歩いたり、朝の光を浴びたりすると、張りつめていた気持ちがほどけていく。多くの人が、経験として知っていることです。
その感覚を暮らしの中に取り入れようとするのが、森林療法や日光浴です。特別な道具はいらず、近所の公園でも始められます。
1-5 呼吸
呼吸のリズムを意識的に変えることで、リラックスできたり、気分を高めることができます。
気持ちのコントロールと呼吸には深いつながりがあります。今、自分の心とからだがどんな状態であるか客観視することもできます。
さらに、目的に応じた呼吸を意図的に行うことによって、心とからだが少しずつ落ち着いてきます。
2 ストレスから引き起こされる心のアンバランスとそのケア
2-1 心が重いと感じる疲労感のあるあなたへ
現代人のようなストレス過多の社会では「疲れを感じている」方が増加中です。これは、本当のからだの「疲れ」ではなく、心が「疲れを感じている」のです。
どちらかといえば、心がうつの方向に向いていたりする心配があります。放っておかずに、自分の心に寄り添う時が来ています。
・疲労感とハーブティーのケア
ダンディライオン(たんぽぽ) 昔から、疲れて食が細くなったときに飲まれてきた。
ペパーミント すっとした香りで、頭がすっきりする。
{ポイント}ペパーミントよりもダンディライオンをやや多めに入れると風味のバランスが整います。5分ほど蒸らしてから飲みます。
・疲労感とアロマの芳香浴
グレープフルーツ 明るい香りで、気分を切りかえたいときに。
ローズマリー スッキリとした香りが心を元気づける。リフレッシュの作用が強い。
{ポイント}ディフューザーなどにそれぞれ2~3滴ずつ入れて香りを楽しみます。
・疲労感とフラワーレメディー
オリーブ 肉体的にも精神的にも消耗して疲れ切った時に元気をくれます。乾燥して荒れた地中海沿岸の土地でも、最後まで花を咲かせ、実をつける生命力の強さを持ちます。気力を取り戻したいときに選ばれることがあります。
{ポイント}レメディ2滴を水やハーブティーなどに入れて飲みます。もしくは、直接舌下に垂らして摂取します。1日に4回、2~3週間ほど様子を見ましょう。
・疲労感の心に寄り添う
疲れているのに、疲れに気がつかないのも危険なことです。「まだ頑張れる・・・」と無理を続けないことも大切です。頑張りすぎない勇気を持ってください。
2-2 極度の緊張を感じているあなたへ
期待に応えようとするあまりに、緊張やプレッシャーに押しつぶされることもあります。緊張が続き過ぎることでパニック状態を生むこともあります。緊張を緩ませるコツを知っておくと便利です。
・緊張をほぐすハーブティー
ジャーマンカモミール イライラを抑える作用。緊張で動揺する心をリラックスさせてくれる。
リンデン やさしく甘い香り。リラックス効果に優れていて、ヨーロッパでは、千の用途を持つといわれている。
{ポイント}フルーティーな風味を楽しめるジャーマンカモミールとリンデンのブレンドティーは、同じ量をブレンドすると良いでしょう。3分ほど蒸らし、お湯が琥珀色になったら出来上がりです。
・頑張りすぎた心に効くアロマ
ベルガモット 清々しい香り。気分を明るくしてくれる。ほとんどの精油と相性が良く、気持ちが沈んだ日にも好まれる。
{ポイント}ハンカチやティッシュなどに1滴垂らして、嗅ぐと、緊張が少しほぐれます。
・緊張を緩めるフラワーレメディ
エルム 任されると自信がない。プレッシャーに弱く逃げ出したくなる時に助けになる。時に仕事でのプレッシャーのサポートになる。
レスキューレメディ 強いショックや緊張に対応する、緊急用のレメディ。
{ポイント}エルムは2滴、レスキューは4滴飲み物に入れるか舌下に垂らします。気持ちが落ち着くまで、15分から1時間置きに服用します。
・緊張の心に寄り添う
緊張から胃が痛くなったり、下痢をしたりする人は、背中にある腎兪というツボを刺激するのも良いでしょう。
腎兪は、ウエストラインから指2本分上の背骨の左右にあります。両手を腰に当てた状態で親指がツボにあたる状態で刺激します。いざという時にも助けになります。
2-3 不安感のあるあなたへ
「不安」は誰にでも見られる一時的な状態ですが、不安の状態が続くのは良くありません。強い不安で、日常に支障をきたさないためにも早めに対処していきましょう。
・不安感を和らげるハーブティー
バレリアン 気持ちを静めたいときに、昔から使われてきたハーブ。眠れない夜にも飲まれる。においにくせがあるので、少量から。
・不安感を和らげるアロマ
ネロリ ビターオレンジの花から抽出する精油。リラックス効果があり、不安やストレスに感じた心をサポートする。
{ポイント}職場では、カップなどの容器にお湯を入れてから、精油を数滴垂らすのも良いでしょう。
・不安を和らげるフラワーレメディ
アスペン 漠然とした恐れや悪夢、将来に対する不安など、そんな気持ちに寄り添うとされる。
{ポイント}2滴を水やハーブティーに入れて飲みます。あるいは、直接舌下に落とし、1日に4回、2~3週間ほど飲んで様子を見ましょう。
レスキューレメディ 緊急時以外にも不安定な心のバランスを調整し、落ち着きを取り戻すためのサポートになる。
{ポイント}4滴を水やハーブティーに落として飲みます。直接舌下に落としても良いです。気持ちが落ち着くまでに15分から1時間おきに飲用します。効きかたには個人差があります。
・不安な心に寄り添う
トラブルの根源とも言われる「不安」です。特に仕事などで強い不安を感じた時には、すぐにケアをしたいですよね。そんな時には、レスキューレメディが役に立ちます。お守りのように、かばんに1本入れている人もいます。
3 まとめ
子どものころ、熱を出して学校を休んだ日のことを覚えているでしょうか。昼間の布団の中で、カーテン越しの光がゆっくり動いていくのを眺めていた。台所からは、おかゆを炊く鍋のことこという音が聞こえてくる。あの日は、何もしなくても誰にも責められませんでした。
大人になると、熱が出るほどにならないと、休む理由が見つからなくなります。「まだ大丈夫」と言いながら、お茶を淹れる五分さえ、あとまわしにしてしまう。
ここで紹介したお茶や香りは、特別な治療ではありません。湯気の立つカップを両手で包んで、ひと息つく。窓を開けて、外の空気を吸いこむ。そういう数分を自分に許すための、きっかけです。つらさが長く続くとき、眠れない夜が重なるときは、ひとりで抱えずに医療機関で相談してみてください。
もう少し時間がとれる日は、近くの公園や林まで歩いてみる。木の下のベンチに座って、葉の揺れる音を聞いているだけでもかまいません。
そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。


