子どものころの色鉛筆の箱を、覚えていますか。ふたを開けると二十四色がきれいに並んでいるのに、よく使う何本かだけが短くなっていて、ほとんど使わない色はいつまでも長いまま。いま思えば、あの減りかたのばらつきに、そのころの自分が少し映っていたのかもしれません。
大人になってマンダラ塗り絵をはじめた方から、色についてこんなご質問をいただきました。なお、曼荼羅は日本や仏教にとどまらないものなので、ここからは「マンダラ」と書いていきます。

色には、昔から人がさまざまな意味を重ねてきました。塗っているうちに、「最近、この色ばかり選んでいるな」と自分の傾向に気づくこともあるでしょう。
ただ、どの色を選んでも、そこに良い悪いはありません。惹かれる色に、そのまま気持ちをゆだねてみてかまわないのです。そのうえで、よく使われる色に重ねられてきた意味を、手がかりとして紹介します。
1 あなたの選ぶ色のこと
1−1 赤
エネルギーに満ち溢れている色です。血液の色と同じということもあり、「肉体」との関わりも強いものになります。時間の経過を表すならば「今、この時」という印象になります。
そのほかのキーワードとしては、生きる・情熱・セクシュアリティ・愛・生み出す力などが挙げられます。
裏の側面としては、怒り・暴力・火というものを象徴する色でもあります。
1−2 青
身近なところでいうと、よく晴れた空の色です。そして、無限の宇宙空間や宇宙から見た地球の色でもあります。この色は、「永遠性」を示す色でもあり、天国の色と表現することもあります。
とても静かで、冷静で、リラックスした色です。聖母マリアのローブがこの色であるように、女性原理の子供を育む面に関わる色でもあります。
1−3 黄
太陽を象徴する色になります。特に、太陽が昇るときと沈むときの動きのリズムがある色です。また、男性性のエネルギッシュな部分との関連性もある色になります。
頭をはっきりさせる色とも言われ、自分に気づかせてくれる「意識の光」にたとえられることもあります。また、情熱を生み出すエネルギーとの関わりもある色です。
1−4 緑
この色を提示されると、森の色とか自然の色という方がとても多いのです。まさに、自然との関わりの深い色で、バランスや調和を意味する色でもあります。
植物の芽吹きをイメージさせる色でもあり、それは根源的な豊穣の力を表しています。そのほかに、新鮮さ・健康・平和・繁栄を象徴する色でもあるのです。
1−5 オレンジ
あたたかく、元気を感じさせる「生命力」の色と言われます。また、持久力、強靭さ、大志を表す色でもあります。南アジアや東南アジアの僧侶の衣の色でもあり、悟りの色とされることもあります。
1−6 紫
高貴で、優美さを表す色でもあります。権力の大きさを表す色にもなります。忍耐・信頼・信仰・禁欲を意味する色になります。日本では、位の高いお坊さんだけが身につけられる衣の色でもありました。
1−7 ターコイズ
青に緑が混ぜ込まれた色になります。寛大さ・愛・癒しを示唆する色になります。世界中の、伝統的な生活様式を営んでいる人々の中に、入り口とか窓の縁をこの色にしているところが多く見られます。
悪いものが入ってこないように、という願いがこめられていると言われます。家族を守りたいという気持ちを、昔の人は色に託したのでしょう。
1−8 茶
土の色でもあるように、大地と豊穣を示す色になります。また、エネルギーを溜め込んだり、閉じ込めたりすることを象徴する色でもあります。
1−9 白
死を超越する、目もくらむような精神の輝きを表す色です。燃え盛った火の後に残された灰の色であり、または雪の静けさを示唆することもあります。純粋・無垢・誕生の象徴の色でもあります。
1−10 黒
夜の闇や喪の色として、少し怖い印象をもたれがちな色です。けれど、身を守る色、すべてを包みこむ色とも考えられてきました。
また、死者の魂に対する敬意の色でもあります。意味が大変深く、記憶・永遠性・不変性も黒によって表現されます。
2 色の選択について
たくさんある色鉛筆の色を見ると、なかなか最初の一本を決めることができないという人が、少なからずいます。マンダラ塗り絵を行う際に、この色選びをするということから、すでに心を整える作業が始まっているのです。
最初にどんな色を選んでもかまいませんが、迷うときは、まず5色だけ選んで始めてみるのがおすすめです。
お寺の行事で見かける五色の幕のように、仏教では「五色」が大切にされてきました。青(緑)・黄・赤・白・黒(紫)の五つです。チベットの砂マンダラなど、ほかのマンダラでも五色を基本にしたものが多く見られます。
2−1 色の傾向について
色の選びかたには、その人の好みが大きく出るので、一概には言えません。それでも、続けて塗っていると、「疲れている時はこの色に手がのびる」といった、自分なりの傾向が見えてくることがあります。
ただ、これだけは知っていただきたいのが、最初がどんな色のマンダラであっても、塗ることを続けていくうちに、どんどんと美しいマンダラになっていくということです。
そして、塗るたびに、気持ちが少しずつ落ち着いていくのを感じる方も多いのです。
2−2 色の塗り方について
マンダラ塗り絵に取り組んでみたら、そのマンダラをちょっと離れた壁に貼って眺めてみてください。
もしそこに、塗り方が薄かったり、偏った塗り方になってしまったり、色が暗い場合もあるかもしれません。そんな時は、次の一枚で、あえて反対のことをしてみるのもひとつです。薄かったら少し濃く、暗かったら明るい色をひとつ足してみる、というように。
3 まとめ──塗るときに意識したいこと
マンダラに色を塗るときは、「集める」と「広げる」を意識してみると、手の運びが変わってきます。外側から中心に向かって、ぎゅっと集まっていく感じ。中心から外側に向かって、ふわっと広がっていく感じ。昔から描かれてきたマンダラには、このどちらかの動きが感じられるものが多いのです。
秋の公園で、足もとの落ち葉を見下ろしたことはありませんか。赤や黄色、茶色、まだ少し緑の残った葉が、誰が並べたわけでもないのに重なりあっている。色を選べない日は、その景色を思い出すだけでもかまいません。自然の中には、もうたくさんの色が塗られています。
塗る手を止めて、窓の外の木を眺めてみる。散歩の途中で、きれいだと思った葉を一枚持ち帰ってみる。その色を、次のマンダラに使ってみるのもいいものです。
選んだ色は、いまの自分を教えてくれる小さな手紙です。
そういう時間のつくりかたを、林浴(りんよく)と呼んでいます。



マンダラアートには、たいてい綺麗な色が塗られていますし、マンダラの塗り絵にも色を落とし込んでいくという作業が伴っています。
私自身もいつも使う色があり、その色が好きかと言えば、そうでない時もありますし、好きではないけれど、どうしても使いたい時があるのです。
マンダラに限らないかもしれませんが、色を選んで塗っていくということは、意味があるのでしょうか?また、どうしても色を選べない時もあるのです。そこにも何か意味はあるのでしょうか?